キウイの朝オレンジの夜
にこにこと稲葉さんが被せて言うのに、宮田副支部長はまた、え?とあたしを振り返る。
何なのよ、この男!!
あたしはムカついて微笑む上司を睨みつけながら言った。
「ええ、それで、ちゃんとキッチリ別れてきました!あやふやなんではなく、完全に!」
今度は稲葉支部長が真顔になった。副支部長は同情したような顔になって、あたしの手を取った。
「・・・あれもこれも、一度に色んなことが起こるわね」
泣き虫の副支部長は、既に目を潤ませている。
「玉ちゃんは負けず嫌いだけど、泣きたいときは泣かなきゃダメよ。発散したいときには言ってね、カラオケでも何でも付き合うから―――――――」
あたしは宮田副支部長に両手を取られながら、目は細めて冷たい視線を稲葉さんに送っていた。
そうなんだぞ、あんたが考えてるようなことじゃなかったんだぞ!と意味を込めて。
実際は少し違うのだが、他者から見れば、仕事で大きな痛手を負ったその日に長年付き合っていた彼氏との破局も決定的になった女、ということになる。
今、宮田副支部長にされているように、大いに同情されて然るべきなのだ。
稲葉さんは開けていた口を閉じて何か言いたそうな顔をしたけど、あたしは寸前で目を逸らし、副支部長ににっこりと微笑んでヤツを無視する。
「久しぶりに寂しいクリスマスですよ、今年は!でも必死で仕事します。あけた穴も埋めなきゃだし、ね」