キウイの朝オレンジの夜
いきなりやる気が出てきた。
重たい営業鞄を持ったまま、上機嫌で色んな店を回った。
ボロボロになってきていた営業鞄、それとパンプス、カシミアのマフラーも奮発して買った。新年に備えて新しい下着セット。いつもはシンプルな飾り気のないブラジャーを選ぶのだが、弾んだ気持ちに引き摺られて明るいオレンジ色のレースのついたものを買ってみた。お揃いのショーツにも顔がにやける。
そして化粧品。睫毛が3倍に伸びるらしいマスカラ(本当だったら凄い)と、クリスマス限定の可愛いアイパレットに一目ぼれした。
「めちゃ可愛い・・・」
手に取って思わず呟くと、販売員が近寄ってきて、試されますか?と聞く。今なら何でもオッケーを出しそうなあたしは笑顔で頷いた。そして美しい美容部員のお姉さんにそれを使って化粧をして貰う。
鏡の中のあたしは、いつもと違っていた。
いつもは営業職故、「賢そう」で、イメージアップの為に「柔らかそう」に見えるように意識してメイクをするのだが、鏡の中のあたしは「ミステリアスで、色っぽい」女になっていた。
瞼の上の紫とピンクの微妙なグラデーションが美しい。頬紅で頬骨が高く見えて顔つきもシャープに見えた。
「おおお~」
お姉さんも自分の腕前を自画自賛していたけど、それは実際素晴らしい出来栄えだった。
そんなわけで、それも購入。
新しいスーツも欲しかったけど、それは諦めて変わりにガウンのようなコートを買った。
前でクロスして着るタイプのコートで、鎖骨のラインが綺麗に少しだけ見えるところが気に入った。