キウイの朝オレンジの夜


 ほぼ全ての気に入ったものを買い込んだ上にマッサージまでして貰ってから、あたしは支部に帰った。

 この自由行動が出来るから、営業職は素敵だ。結果さえ残せばそれ以外は厳しく問われないというのは、他の職種ではあまりないだろうと思う。

 買い物によるストレス発散と、来年一発目の契約の確約、それとマッサージによる肩こりのほぐれで、あたしはやたらとキラキラオーラを放っていたらしい。

 支部長達が会議から帰ってくる前に会社を出ようとバタバタ支度をしている支部のメンバーに、口々に褒められた。

「どうしたのよ玉ちゃん!いいことでもあった?ってか、出て行った時とメイク変わってない?」

「あらまあ、たくさん買い物したのねえ!ちょっとは発散できた?」

「いいじゃん、似合うよ~そのメイク!街で誰かいい男をナンパしに行くの?」

 方々から声が飛ぶ。あたしはあはははと笑ってすいすいと交わして自席に行った。

「貰うはずだった契約は流れたんですけど、帰りに久しぶりに買い物でも、と思ったらこんなことになっちゃいまして」

 大久保さんがニコニコしながら近づいてきて言った。

「よく似合ってるわ、そのメイク。いつもより大人っぽい感じよ」

 ありがとうございます~!と機嫌よく返す。ここ最近でこんなに褒められることなかったぞ。嬉しいぜ。やっぱり人間はいくつになっても褒められたい生き物なんだな。


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