キウイの朝オレンジの夜
あたしは24歳の繭ちゃんに同情したんだった。どうか辞めるなんて言わないで!と祈っていた。
すると、支社の研修で行動を共にしていた別の支部の男性営業から先日告白されたらしい。これは繭ちゃん本人が言っていた。
なので彼女はするりと稲葉支部長への恋心を捨て、その男性営業に乗り換えたってわけだ。今日はその彼とクリスマスディナーらしい。・・・ま、それも若さだよね、とあたしは思う。
なんにせよ、良かった、これで火種がなくなって、と副支部長と胸を撫で下ろしたんだった。
あっという間に支部にはあたし一人になった。
時計のコチコチ言う音が耳障りで、あたしは買ったもの一式と、オレンジと水の入ったバスケットを持って支部の2階へ上がる。
あたしがよく使っているから、副支部長が「玉の部屋」と呼んでいる階段からすぐの手前の小部屋。
そこに入り、いつものようにオレンジを食べる。水の飲む。そして来年の計画表を見ながら自分の個人成績表と格闘を始めた。
3月までに、通算10件はいる。そうしておけば夏までが楽だ。ってことは、あそことあそこと――――――――
今までの顧客様に頂いている紹介をちゃんと全部物に出来れば、大丈夫だと判って一息ついた。
あー・・・よかった・・・。ほんと、一時はどうなることかと思ったああ~・・・。
安心した勢いで泣きそうになった。ダメダメ、別に喜びの涙をながすことでもない。大体、紹介して頂けたって、その相手をあたしが信頼してもらえるかはまだわからないのだ。
でも、とにかく・・・。これで気が楽に、新年を迎えられるってもんである。