キウイの朝オレンジの夜


 あたしはにんまりと笑って、今日買った素敵なものたちを袋から出して並べた。

 持参したハサミでタグを切り取りながら、ドアのところにある小さな姿見で自分に当ててみては楽しむ。

 うーん、いい買い物したわあ~!!喜びが止まらない。買い物、本当に久しぶりだったんだもんなあ。

 ジャケットを脱いで、新しいコートを着てみる。今日はジャケットの下にはシルクに見える光沢のあるトップスを着ていてシャツではなかったので、このままでも似合うなあ・・・帰り、このままで行こうかなあ~。

 中腰になって鏡で確かめていたら、コンコンとノックが聞こえ、あたしのすぐ横のドアが開いたから驚いてよろけた上にソファーに倒れ込んでしまった。

「ひゃあ!?」

 髪が顔にかかって誰が入ってきたのか判らない。あたしがソファーでじたばたしていると、腕を引っ張り上げられた。

「・・・何してるのかと思ったら・・・」

 ――――――この声は!!!

「しっ・・・支部長!?」

 あたしは片手で髪を払って、何とか体勢を立て直してから改めて見上げた。

 少し乱れた髪を手櫛で直しながら立つ稲葉さんは、うんざりする半日の会議で疲れ切っているはずなのに、やっぱり格好良かった。そのちょっと疲れてますって感じが色気を増幅させている。・・・どうしてそうなるのか、不思議でたまらない。


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