キウイの朝オレンジの夜
「いえ、大したものでは」
「・・・・オレンジ色小花柄のレース」
「ってか、見てるじゃないですかっ!!」
真っ赤になったあたしが噛み付くと、にやりと笑って稲葉さんは言った。
「怒るなよ、拾ってやったのにさ」
もうー!!あたしはバタバタと買い物を回収し、ショッピングバックに突っ込む。
稲葉さんはドアから離れて机の上の来年の計画表と個人成績表を手に取った。
「・・・計画を立ててたのか。どうにかなりそうか?」
あたしはまだ顔を赤くしたまま何とか持ち物をまとめて、振り返った。
「あ―――――はい、ええと・・・。今頂いてるお客さまからの紹介をちゃんとものに出来れば、何とか。今日貰えなかった契約は、年始にアポが取れてますし――――」
ソファーに座って計画表を読み込む支部長の隣から、指を使って説明を加える。
彼に近づくと前に一度抱きしめられた時の記憶が蘇って一瞬鼓動が早くなったけど、挙動不審にはならずに済んだ。
稲葉さんは軽く頷いて、何点かあるあやふやな点を指摘した。それに答えるべく手帳を取ってめくっていたら、隣から視線を感じて顔をあげた。
垂れ目を柔らかく細めて、稲葉さんがじっと見ている。
「・・・何ですか?」
あたしは少し身を引いてから聞く。するとヒョイと左手を伸ばして、いきなりあたしの顎を掴んだから目が点になった。