キウイの朝オレンジの夜
「へっ・・・」
「化粧、変えた?朝と違わないか?」
ヤツはあたしの顎を掴んだまま、まじまじと顔を近づけて凝視する。あたしは急激に体温が上がるのを感じながら目を見開いていた。
ふわりと稲葉さんの香りがした。
「・・・」
「違うよな。何だか印象が色っぽくなったような・・・」
じいっと見られるのに耐え切れず、あたしは両手で稲葉さんの手を払って身を引いた。
「かっ・・・買い物中に、メイクもして貰ったんです!」
まだ視線を外さないまま、稲葉さんはふうん、と呟いた。
「女性って本当化粧で雰囲気変わるよな。凄い技術だ」
・・・それって、ちっとも褒められてる感じしないぞ。うーん・・・・そうか、褒めてないのか、別に。あくまでも化粧技術を褒めたんだよね、今のって。
ドギマギしてしまったあたしは悔しくて、仕返しにと噛み付くことにした。声を意地悪モードに変えてちろりと横目で見る。
「支部長は、女性に興味なさそうですもんねーえ。もしかして、同性愛主義だったりします?」
軽くジャブをいれると嫌そうな顔と声が返って来た。
「・・・何でだよ。男にそんな興味ねーよ」
「だって、あんなべっぴんの繭ちゃんに抱きつかれても、全然嬉しそうじゃなかったですよねえ~。妻子が居る人でも嬉しいもんなんじゃないのかなあ、あれって。だからやっぱり支部長は、実は男性が好き??」