キウイの朝オレンジの夜
鞄も濡れてしまっていたけど湿ったハンドタオルでざざっとスーツから水滴を払って、恨めしく空を見上げた。
ちっくしょう!もう雨止んでやがる!
駅の構内の鏡を覗き込むと見事に化粧の崩れたあたしがいた。
パンダ目と消えた眉、寄ったファンデの跡とぺったりと額にはりつく前髪。・・・ぶっさいく。平均そこそこの顔を化粧と日々の研究で‘まあそれなり’のレベルまで上げているのだ。寝不足に豪雨で素顔よりも恐ろしい顔になっている。
あーあ。もう、この言葉しか出ないよ・・・。
指の腹で目元だけでも拭い取って、改札を通った。
同じく豪雨に見舞われた可哀想な人たちとぎゅうぎゅう詰めで電車に乗った。
不快だ。湿った空気。濡れた衣服から発生する嫌なにおい。そこにいる全員が諦めた顔をして何とか立っていた。
ああ・・・これが日本のサラリーマン・・・。そんな状態に40分ほど耐えて、やっと事務所がある駅まで着いた。
すでに、よろよろだった。
保険会社の事務所は大体駅前か、大きな通り沿いにある。
そんなわけでそれ以上通行人に酷い顔面を晒さずに会社に逃げ込めた。
続々と事務所のパーキングに入ってくる営業職員の軽自動車を避けながら職員の入口へ飛び込む。
駐車場からの入口には提携している飲料会社の自販機が2台並び、喫煙組みがたむろする。
何せ支部長と事務2名に至るまで全員が女性のこの事務所、喫煙率が非常に高い保険会社の営業職員ではあるが、やはり屋内での喫煙は嫌がられるということで、自販機の前にアッシュケースがバラバラと置いてあるのだ。