キウイの朝オレンジの夜
何人かが行き交うけどあたしには気付いてくれず、あたしは半身をドアから滑り込ませて、丁度通りかかった女性に笑顔を向けた。
「あの、お忙しいところすみません、受付の方はいらっしゃいますでしょうか」
書類の束を抱えて歩いてきた女性は、はい?と華やかな笑顔でこちらに近づいてくる。
「〇〇生命保険の神野と申します。出入りの許可を頂きたくてお邪魔しておりますが、受付の方、お姿がなくて・・・」
「あら、いない?」
あたしの横からドアに手をやって、ホールを見た。
「本当ね、どこにいったのかしら、もう。―――――ええと・・・」
ドアから顔を突き出してキョロキョロしていたその女性は、くるりとあたしに向き直って微笑んだ。
「この事務所は移転してきたばかりで、まだどの保険会社さんも入ってないのよ。だけど総務に聞いてきてあげるわね、丁度用があって出向くところだから」
「ありがとうございます!」
あたしは頭を下げて、急いで名刺を取り出した。
女性はあたしを応接に使っていると思われるスペースまで連れて行ってくれて、お待ち下さいと微笑んで歩いて行った。
・・・うわあ~・・・何か、素敵な人~。明るい色で染めてある髪の毛は短く、パーマが当たっているのかふわふわと顔の周りで跳ねていて可愛いし、大きめの口を綺麗に開けての笑うのは見ている方が楽しくなる笑顔だった。
灰色のストライプのスカートスーツ。綺麗な足に高いヒールで、いかにもなキャリアウーマンだったけど、耳元の大きめのピアスがその硬そうな印象を大いに柔らかく変えている。