変わった同居人
「お兄さん?」
どうして淡島さんの前で話してしまったのかは分からないが、何故か今日ふと思い出してしまった。
思い出に浸る性格ではないはずなのに。
「ええ。
でも、十年くらい前に行方不明になってしまいました。」
一体どうしてこんな話をしてしまっているのだろうか?
そう思いながらも口は勝手に動いていく。
「私を産んですぐ母が亡くなって父が蒸発してしまったんです。
だから最初は兄と2人で親戚の家に預かってもらってました。」
「…………」
「兄と居た頃の思い出なんてほとんどありません。
だけど…兄と一緒に食べたアイスと兄が居なくなった日は覚えてます。」