ヘタレ少年と恋模様
だから、まずそのためには俺から近づいていくことからだ。
あっちが来ないならこっちから行けばいい。
とさっきから何度も思うものの。
だー!無理だっ!
俺から行ったとしてなんて声掛ければいいんだよ。
「仲間に入れてください」ってか?
ダメだダメだ恥ずかしい。
でもこのまま行動を移さなければ、今までの俺と一緒だ。
また「女子と仲がいいから」という理由で近づかれて、それで勝手に自分で傷ついて。
もっと自分に自信があれば。
そうすればくよくよせずに、堂々と行動に移せるんだ。
俺はうつ伏せにしていた顔を上げた。
とりあえず、俺でも話し掛けやすそうな穏やかなやつを探そう。
そう思ってキョロキョロしてると、
「おい、山村瑛士ってこのクラスにいる?」
そう呼びかける声が聞こえた。
えっ、俺?
どうやら俺を探してる主は前のほうの扉にいるらしく、俺の席からは姿が見えない。
「あの、山村くんならいますけど」
そう答えた女子がちらとこちらに視線を向ける。
その視線は心なしか怯えてるように見えた。
一体、誰が?
「おっ、どこどこ?」
声の主はそう言って教室の中に入ってきた。
「あっ」
パッと視線が合い、相手は軽く手を挙げた。
「よお」
「ど、どうもこんにちは」
「ちょっとこっち来いよ」
そう言って手招きしているのは、入学式の日に会った金髪爽やか短髪ボーイこと、風太さんだった。