ペーパースカイ【完結】
〈1〉輪子:苺のこと
そういえば苺は、昔からへんてこな女だった。
初めて言葉をかわした時からして、変だった。すでに。
あれは中学一年の春の、身体測定の日だった。
私は名字が「綿引」で、三組女子の一番最後。
苺は「相川」で、四組女子の一番最初。
保健室前の廊下にずらずらと並んで順番待ちをしている時、
後ろからふいに苺が話しかけてきた。
「ねえねえ。色白いねえ」
ねえねえ、の部分で私の肩をとんとん、とリズミカルにつつきながら。
振り向くと、茶色い髪をくるんとてっぺんでちょこんとまとめた、
私よりも頭ひとつ分くらい背の小さい女の子が、
くちびるの両端から猫の牙みたいな歯をニュッとのぞかせて、
ニコニコと笑っていた。
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