ペーパースカイ【完結】
コン、コン。

ふいにドアがノックされ、静かに開いた。

「………幸太………」

ずっと待っていた、会いたかった、幸太がそこに立っていた。

輪子は、あたしの手を再び軽く包んでくれた後、そっと離した。

そして椅子から立ち上がって、軽く幸太に会釈をしてから、ドアの外に出て行った。

幸太はただ、黙って立っていた。

ずっと待っていた、会いたかった、幸太。

……それなのに。

少しも笑顔になれなかったのは、体調のせいだけではないと思う。

ギギ、と椅子を軽く引いて幸太は座った。

幸太が揺らした空気から、煙草とお酒の匂いがした。
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