ペーパースカイ【完結】
「…あたし、幸太の部屋で、ずっと待ってたんだよ」

「………うん」

しょげたような、バツが悪いような、なんとも言えない表情の幸太。

「すぐ帰るって言ってたから、ずっと待ってたのに。携帯だって、つながんなくて……」

「あぁ……地下のカラオケ行ったから……なんか…抜けるに抜けれなくて。

盛り上がっちゃってさ、みんなが」

「…それなら…メールくらい、くれたっていいじゃん」

輪子の両手の温もりがなくなった手が、急に淋しい。

「いや、…あのさ、小川とかが超たちわりー酔い方しててさ、離してくれねーからさ」

「………」

なんだか突然幸太が他人のように見えた。

こんなふうな、人だったっけ?言い訳ばかり言うような。

それを、人のせいにばかりするような。

「……そっか」

大丈夫?も、言ってくれない。

「そう、そう。マジでさ、すっげー苦労して、やっと帰れたんだよ」

ごめんね、の一言もない。

「うん、もうわかった。所でさ、幸太」

「え?」

あたしは、小さく息を吸い込んだ。

そして。

最後のつもりで、言ってみた。
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