ペーパースカイ【完結】
亡くなった人を思う時、なぜ人は空を見上げるんだろう?

私は今日一日中、空ばかりを見ていた。

苺を私のベッドに寝かせて、駅に向かう道のり。

職場へ向かう道のり。

昼休みの屋上。

そして、帰り道。

波打つ巨大な紙の空は、目まぐるしくその色を変えていった。

蒼ざめる。

白い絵の具を薄く伸ばす。

優しいピンクとオレンジが混ざる。

紫に染まる。

漆黒に揺れる。

祈るように振り仰ぐ空、鋭い爪の形をした光がはりつく。

『あのでっかい紙をビリビリ破くとね、世界は全部光ってんの!!』

いつだか苺が言っていた、あの、希望と生命力に満ちあふれた言葉を。

私はずっと信じていたし、これからもずっと信じているよ。

『もう、中絶はしたくない』

帰り道、ぽつんと届いた苺からのメールに、

『する必要は一つもないよ』

と、私は返した。

『どうしてないの?』

愛してるから。

あの闇を全部、ビリビリと破こう。

みんなで一緒に破こうよ。

大丈夫だから。そばにいるから。

『ほんとにいいの?』

『ほんとにいいよ』

愛してるから。

守りたいから。

世界を全部、綺麗に照らそう。

『輪子はどうしてやさしいの?』

『苺は、私の家族だから』
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