ペーパースカイ【完結】
#1 憧子 
さっきまで降っていた雨と、土と緑の匂いに気を取られていたら

芳明が持っている傘がゆっくりと傾き、あっと思う間もなく唇をふさがれた。

男の子の唇って、

こんなに柔らかいんだ。

なんだろ、この感じ。

唇が触れ合うことよりも、目と目が合うことの方が数十倍恥ずかしい。

胸の中で太鼓が鳴り響いてるみたい。

スカートの中で小鳥が暴れてるみたい。

私たちは目を伏せたままちょっと笑った。

そして芳明が傘を閉じようとした…

その、時。

「あー!憧子ぉおおお!!!憧子ちーーん!!!」

ええええ… 嘘でしょ…

初めてのキスの余韻が、一気にぶっ飛んだ。

ちっこい身体にでっかい声。ママが向こうから、走ってくる。

こういった場面では、極力家族に会いたくないのに。

ていうか、特にママには…。



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