ペーパースカイ【完結】
「ぎゃあああああ!卵が割れてるよおおお!!」

「えー?マジで??苺、さては転んだんでしょう?」

さすが、輪子さん。ママとのつきあいが長いだけのことはある。

台所から聞こえるこのやり取りに、隣に座った芳明がプッと吹き出す。

「しょーがないなぁ…ねー!憧子ー!」

パタパタとスリッパを鳴らして、輪子さんがやって来た。

「悪いんだけど、卵買ってきてくれない?」

「う、うん…」

「あ、俺も一緒に行きます」

「ほんと?ごめんねー。お願いね。…あれ?」

輪子さんの目線の先には、柱に隠れたチビっこい影。

苺子。

「どしたの苺子ー?お兄ちゃんいるから、恥ずかしいのかな?」

輪子さんが、くすくす笑いながら苺子を抱っこする。

私も恥ずかしい。

イヤイヤするように輪子さんの首元に顔をうずめた苺子の頭を

芳明が笑いながらそっと撫でたのを見て、

さらになんだか胸がドキドキ。

私の家に芳明がいる。ただそれだけで、私はとても恥ずかしい。


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