ペーパースカイ【完結】
「ああ、来た来た。あれ見てよ、憧子ちゃん」

居間に入ると一哉さんが指差す先に、芳明に抱っこされながらゲームをして

楽しそうに笑い声を上げる苺子の姿があった。

「お義父さんや俺のことなんか、見向きもしないんだよー」

と一哉さんは笑った。私はびっくりだ。

いつだって甘えん坊の苺子は輪子さんがそばにいない時は「パパ、パパ」「じいじ、じいじ」でべったりなのに。

よその人にはめったに懐かないのに、なぁ…。

なんだか不思議な光景だ。芳明はすっかりうちの家族に馴染んでる。

ひょっとしたら私よりも、このうちの空気に馴染んでたりして…。

私は芳明の隣に行き、器用にゲームをプレイしている苺子に声をかけた。

「ねえ、まいちゃん。このお兄ちゃんのこと、好きなの?」

「うん。すきー」

はは、と芳明は笑って私を見上げた。

「やっぱり可愛いな、女の子って。俺も妹ほしかったな」

「そう?」

「うん。こんな静かに座ってないもん、弟たちは」

「芳明、一番上なんだ。だからちっちゃい子の相手慣れてるんだね」

「そうかも知れない」

「結婚したら、いーパパになりそぉだねー!よかったね、憧子ちん!」

ばーん、とドアを開けていきなり入ってきたママが、突然会話に加わった。

「なによ、よかったって」

いやな予感がしながらも、つい聞いてしまった。



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