ペーパースカイ【完結】
コンコン。

申し訳なさそうなノックの音。

二階の、昔輪子さんが使ってた部屋が、今は私の部屋だ。

ビーズクッションを抱いて座ったまま「どうぞ」と小さく言うと、芳明がドアを開けた。

「どうしたの?憧子。…入っても、いい?」

こくんと頷くと、なんだか涙が出そうになった。

「ごめんね、芳明」

「なにが?」

「…うちのママ、強引だから… ご飯無理やり誘っちゃったし、変なことばっか言うし」

「いいお母さんじゃん。憧子はイヤなの?」

「…普段はそんなでもないけど…時々ちょっとイヤ」

クッションに顔を埋めたら、芳明の大きな手のひらで頭を撫でられた。

気持ちいい。

気持ち、いいな…。

「まぁ、どこんちだってそういうものかもな。俺も親は嫌いじゃないけど

時々めちゃくちゃウザいって思う時もあるよ」

そっと顔を上げたら、芳明の端整な横顔が笑っている。

こんなに近くにいられるなんて、夢みたいだなってぼんやり思う。

私、今すっごい幸せなはずなのに。

ママの変な言動のおかげで、なんだかすごく落ち込んでる…。

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