ペーパースカイ【完結】
〈3〉輪子:ロマンチック・タワーケーキ
「どうしたの?…陽司君と、何かあったの?」


苺。

ついさっきまで自分の失恋で、びいびい泣いていたくせに。

今はそんな事なんてもう、空の彼方に飛んでいってしまったかのように、

私の顔をじっと見つめて、本気で心配している。

なんてかわいいんだろ、この子。

あんたを平気で傷つけて捨てていった男全員、できる事なら私の拳で、

思いきり殴り飛ばしてやりたいよ。

「ううん。特に何かがあったってわけじゃないから、大丈夫だよ」

「ほんとに?」

「うん」

「…ほんとのほんとに?」

ふふ。

なんだか、くすぐったい笑みがこぼれた。

「ほんとだってば。ごめんね。なんか変な事言ったね、私」

自分でもちょっと、びっくりした。

あんな事言うなんて。

まだちょっと、半信半疑っぽい顔のままの苺をなだめていたら、

携帯が鳴った。

陽司からだ。
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