ペーパースカイ【完結】
「苺、すっごい嬉しそうね」

白菜をざくざく刻みながら輪子が言う。

「うふふーん♪輪子ちんも、嬉しそうだよ?」

「ふふふ」

「えへへ!」

あたしもだけど、輪子もずっと心配してくれてたもんね。

『好きな人なんか、いらない』

小学生の時も、中学生の時も、いつだってそう言ってた憧子。

バレンタインに男の子にチョコをあげたことさえなかった。けど、今は。

「今頃二人でスーパーで卵買ってるねー」

「新婚さんごっこみたいね。あー、なんかいいなぁ。…良かったね、苺」

「うん!」

あたしが、悪いんだ。あたしが、ちゃんとした家族作ってあげられなかったから。

パパのいない子にしてしまったから、だから憧子は好きな人ができないんだ。

輪子はあたしがそう言って落ち込むたびに、『そんなことないよ』って慰めてくれてたけど。

そして、自分でもそう思いたかったけど。

輪子と苺子と一哉くんと輪子パパを見ていると、やっぱり家族っていいなって思うし

同じように仲間入りさせてもらってはいるけど、憧子の言葉を聞くたびに

あの子にはいつも申し訳ない気持ちでいっぱいになっちゃってたから。

だから… ほんとーーーに、今嬉しい。


憧子と芳明くん。


ずーっとずーっと、仲良しでいてくれたら、いいな。





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