ペーパースカイ【完結】
# 3 憧子
「憧子!早く!!」
「えっ」
足に力が入らなくて、へたり込んでいた私の腕を、少し痛いくらいの力で芳明が引っ張った。
「しっかりしろよ、俺も行くから!」
「あ…」
なんだろう。声が、きちんと言葉にならない。
救急隊の人達がドヤドヤと家に上がりこみ、倒れているママを担架に運ぶ。
色のない景色。現実。
現実なの?なんで、こうなったの?
私が…
私が『ママなんて、いらない』なんて言ったせい?
「お父さん、一哉、私行って来る。苺子よろしくね」
芳明に半ば引きずられるように玄関へと歩く私の元に来た輪子さんが
「大丈夫。憧子、しっかりね」
と言った。
声は冷静だったけれど、その顔色は紙のように真っ白だった。
頷きながらも、どうしても思い出してしまう出来事があるのは
私よりも輪子さんの方だろう、と思った。
彼女のお母さんは、あの階段からの転落事故で亡くなっているのだから。
救急車の中で、すでに横たわっていたママは目を閉じたまま動かない。
不穏なサイレン音を鳴らして、車は走り出した。
「えっ」
足に力が入らなくて、へたり込んでいた私の腕を、少し痛いくらいの力で芳明が引っ張った。
「しっかりしろよ、俺も行くから!」
「あ…」
なんだろう。声が、きちんと言葉にならない。
救急隊の人達がドヤドヤと家に上がりこみ、倒れているママを担架に運ぶ。
色のない景色。現実。
現実なの?なんで、こうなったの?
私が…
私が『ママなんて、いらない』なんて言ったせい?
「お父さん、一哉、私行って来る。苺子よろしくね」
芳明に半ば引きずられるように玄関へと歩く私の元に来た輪子さんが
「大丈夫。憧子、しっかりね」
と言った。
声は冷静だったけれど、その顔色は紙のように真っ白だった。
頷きながらも、どうしても思い出してしまう出来事があるのは
私よりも輪子さんの方だろう、と思った。
彼女のお母さんは、あの階段からの転落事故で亡くなっているのだから。
救急車の中で、すでに横たわっていたママは目を閉じたまま動かない。
不穏なサイレン音を鳴らして、車は走り出した。