ペーパースカイ【完結】
「気づかれましたよ」

薄暗い、夜の病院の廊下にあるベンチに

輪子さんと芳明と黙って座っていたら、思っていたよりすぐに看護師さんに呼ばれた。

慌てて診察室に入ると、ベッドの上のママとぱっちり目があった。

私はまた足の力が抜けそうになり、芳明の腕につかまった。

「苺?大丈夫?…私、わかる?」

「……」

輪子さんの問いかけに、ママは何も答えなかった。

お医者さんはサラサラと何か書き物をしながら

「まだちょっと意識が混濁してるかも知れませんね。頭の検査もありますし、

結果や経過にもよりますが、一週間から二週間ほどの入院が必要ですよ」

と言った。

ママの腕に、看護師さんが包帯を巻いている。見れば、なんだかあちこちに打ち身のアザが出来ていた。

痛々しくて、私は思わず目を逸らし、うつむいてしまった。

「大丈夫か?」

芳明がそんな私に気づいて、優しく声をかけてくれる。なんだか泣きそうだ。

輪子さんが、とりあえず家に連絡してくると言って出て行った。

ママは点滴の針を刺された時、ちょっと顔をしかめたけれど、声は出さなかった。





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