ペーパースカイ【完結】
ママのベッドの前に座りこんで、また目を閉じて動かなくなったその顔を見ていた。

ママなんて。

ママなんて…。

いっつも能天気で。おっちょこちょいで。子供みたいで。

私のこと… 芳明とのこと、冷やかして、喜んだりして、さ。

全然、私の気持ちなんて、わかってくれない。

わかろうとも、してくれないで。

ただいっつも…「憧子ちーん!」なんてさ。ほんと、子供みたいな呼び方して。

バカじゃないの…階段から落っこちるなんて。

何年、あの家に住んでるのよ。

ほんと…バッカみたい。

「憧子、今日はもう遅いから帰ろう。お父さん車で迎えに来たから。明日また来よう」

そっと私の両肩に、輪子さんの手が置かれた。

「芳明くんも…ごめんなさいね、こんな遅くまでつきあってもらって」

「いえ」

「憧子、行くわよ。憧子?」

「え?」

振り向いた瞬間。

涙が、こぼれた。

「あれ?」

どんどん。どんどん。あふれたそれはもう止まらなくなった。

ちょっと、ううん。すっごい。

私、今、すごい泣いてる…

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