ペーパースカイ【完結】
芳明は、車の中でずっと手をつないでいてくれた。

大泣きした私は、身体中の力が抜けてしまい、何を話す気力もなく、黙って窓の外の景色を見ていた。

輪子さんも、輪子さんのお父さんも、ほとんど話さず黙っているようだった。

沈黙の騒音が耳の中で唸り続けている。

「あ、そこつきあたり右です」

時々、芳明が道順を言う。

その深くて静かな響きだけが、今の私をほんの少し安心させてくれている。

来たことのない、初めて見る芳明の家。

その前に着くと、輪子さんたちは芳明にお礼を言った。

もう手と手を離さなくては、とわかっていながらも、自分からはできなくて

そっと芳明を見上げると

「明日またメールするよ」

と、微笑んでくれた。

それで私はゆっくり頷いて、やっと彼の手を離せた。

再び車が走り出す。振り向くと、芳明はまだそこに立ち止まっていた。

「やさしい男の子ね」

助手席の輪子さんの言葉に、やはり私はただゆっくりと頷いた。

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