ペーパースカイ【完結】
寝返りを何十回も繰り返した後、

首筋を突然冷えた指先で撫でられたような悪い夢を見て、目が覚めた。

枕元の携帯を手探る。午前三時過ぎ。

ため息をついて、ベッドから起き上がり部屋を出ると

階下の電気が階段をぼんやりと照らしていた。消し忘れたのだろうか?

一瞬、階段をじっと見つめてから、ゆっくりと下りていくと

「憧子?」

と、囁く輪子さんの声が聞こえて驚いた。

「輪子さん…まだ起きてたの?」

「憧子こそ。どうしたの?トイレ?」

輪子さんは、テーブルに肘をついて座っている。まだ洋服姿のままだった。

「ううん…なんか、寝つき悪くて…」

その正面に腰かけながら、私も同じように肘をつき、再びため息をついた。

そしてしばらくお互い黙っていると、しんと闇の音だけが聞こえた。

まるで家ごと地の底に沈みこんでいくような。不安な気持ち。

「着替えておいでよ」

ふいに、小さく輪子さんが言った。

「え?」

「ちょっと、お散歩。つきあわない?眠れないなら。…なんだか永遠に底がないエレベーターで

どんどん落ちてくみたいなのよ、気分が」

「……」

急な誘いに返事をしかねていたら、今にも泣き出しそうに力なく

「ダメね、私」

輪子さんは、笑った。











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