ペーパースカイ【完結】
くじら公園は小さい頃、何度も何度も通った。
けれども、こんな真夜中に来ると、
なぜだか見知らぬ場所に見える。
「あはは、見て。ブランコの向こう」
輪子さんが、指差す。白い猫が、歩みを止めてこちらを見ていた。
ほんの数歩、私たちがブランコの方へ歩き出したら、身を低くしたまま、茂みへと消えていった。
あはは、とまた笑って、輪子さんがブランコに乗る。
私もその隣で、緩くブランコを漕ぎながら、なんとなく空を見上げた。
漆黒の闇に、ぼんやりと丸みを帯びた月が貼りついていた。
「懐かしいね、ここ。憧子が小さい頃、いっぱい来たの覚えてる?」
「うん」
「昔さ、苺ともこんな夜中にここに来て、あのくじらのおもちゃに登ってさ
二人でカクテル飲んで酔っ払って話したりしたよ」
あの、というところで輪子さんはぴんと人差し指を伸ばし、この公園の名前の由来である
中央辺りに設置されている大きなくじらの遊具を指した。
「それって、いつの話?」
「んー。高校生の頃」
「酔っ払っちゃ、だめじゃん!不良だなぁ二人とも」
「あはは。持ってきたのは、苺だよ?『失恋祝い』にって」
「……失恋?」
けれども、こんな真夜中に来ると、
なぜだか見知らぬ場所に見える。
「あはは、見て。ブランコの向こう」
輪子さんが、指差す。白い猫が、歩みを止めてこちらを見ていた。
ほんの数歩、私たちがブランコの方へ歩き出したら、身を低くしたまま、茂みへと消えていった。
あはは、とまた笑って、輪子さんがブランコに乗る。
私もその隣で、緩くブランコを漕ぎながら、なんとなく空を見上げた。
漆黒の闇に、ぼんやりと丸みを帯びた月が貼りついていた。
「懐かしいね、ここ。憧子が小さい頃、いっぱい来たの覚えてる?」
「うん」
「昔さ、苺ともこんな夜中にここに来て、あのくじらのおもちゃに登ってさ
二人でカクテル飲んで酔っ払って話したりしたよ」
あの、というところで輪子さんはぴんと人差し指を伸ばし、この公園の名前の由来である
中央辺りに設置されている大きなくじらの遊具を指した。
「それって、いつの話?」
「んー。高校生の頃」
「酔っ払っちゃ、だめじゃん!不良だなぁ二人とも」
「あはは。持ってきたのは、苺だよ?『失恋祝い』にって」
「……失恋?」