ペーパースカイ【完結】
「そう。私たちね、同じタイミングで失恋したことがあったの」

輪子さんの声に新聞配達のバイクの音が重なる。

くじらの上に、いつか写真で見た高校生の頃のママと輪子さんの姿が浮かぶ。

今の私と同じくらいの頃の二人。

「苺はね、『すっごくいい失恋したんだよ!』って聞かせてくれた。

あの子はね、いつだってそうなの。どんなに悲しい時でも、明るくて強くて。

私が持っていない魅力でいっぱいなの。今も昔も」

「……」

私がいまいち納得のいかない表情をしていたら、

「憧子にとっての苺は?」

と聞かれてしまい、困った。

私にとっての、ママ、かぁ。

「…なんか、子供みたいだなって思う。あと、なんでもはっきり言うから…

時々恥ずかしいな…」

「憧子、苺の子とは思えないくらいしっかりしてるもんね。顔は似てるのに」

「似てるかな?」

「うん。こうやってると、高校生の時の苺といるみたいだもの」
< 145 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop