ペーパースカイ【完結】
ソフトクリームを食べ終わる頃、思い出した。

「あの月は、どんなふうに見える?」

輪子さんが聞いた時のママの答え。すっかり聞くのを忘れていた。

失恋をした後、ママの目に月はどんなふうに映ってたのか。

私は…

私にとっては『失恋』なんて、頭の中で言いたくもないくらい怖いこと。

そんな時にはもう、絶望しか思いつかない気がする。

「ちょっと風出てきたな。そろそろメシ食いに行こうか?」

「うん」

自然に差し出される芳明の左手に右手を伸ばす。

ぴったりと、一ミリの隙間も作らないようにその手を握る。

そんなことは叶わないんだってこと、わかっていても。

一ミリも離れないように。離さないように。ギュッと握りしめる。

空は雲の隙間から見える青の部分が、少しずつ夜に帰る準備を始めているようだった。

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