ペーパースカイ【完結】
検査の結果も問題なく、その後の経過も良かったので

ママの入院生活は十日で終わった。

退院の日は輪子さんにお任せして私はいつも通り学校に行った。

何度か遅刻や欠席をしたので、ママの話は仲のいい友達には話してあり

「今日退院なんだ」

と知らせると「良かったねー」「おめでとうっておばさんに言っておいて」

と声をかけられた。

今日、家に帰ったら、ママがいる。

結局「月の話」はなんとなく言い出せず、うやむやのままだったけれど

そんなことよりも気になることが、心の中で黒いもやになってうずまき

ここ数日、私をずっと不安にさせているのだ。

「あ、またじゃん、よっちゃん」

友達が言った瞬間、ドキっとした。

よっちゃん、というのは芳明の学校でのあだ名だ。

教室のドアのところで先生と何か話している。

「憧子、聞いたの?絶対なんかあるよ、よっちゃん。ここんとこよくああや

って話してるもん」

「うん… でも、『なんでもない』って言うから、それ以上なんか聞けなくて」

「えー。でもあんた彼女じゃん」

ペットボトルの紅茶を飲みながら別の子が言う。

「そうなんだけどさ…」
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