ペーパースカイ【完結】
# 7 憧子
部屋に戻ったら、暗闇で携帯が光っていた。芳明から。

着信が一回と、メールが一件、入ってる。

『明日またこれからのこと話そう』

ーーこれから?

私は制服を脱いで、またメールを読み、着替えてからまたメールを見た。

これからなんて、あるんだろうか、と思う。

芳明がいなくなるまで、もうほんのわずかだというのに。

何も外国に行くわけじゃない。新幹線に乗れば二時間ちょっとで着くと

たぶん、私を不安にさせないために芳明は明るく言っていたけれど。

毎日学校に来れば会えた今までとは、あきらかに違う。

何もかもが、変わる。

変わって、しまうじゃないか。

それなのに、何を話し合うというんだろう。

距離が遠ければ。環境が変わり、なかなか会えなくなれば。

芳明の気持ちだって、どう変わるかわからないじゃないか。

ベッドに突っ伏し、泣いた。嗚咽が漏れないように、枕に強く顔を押しつけた。

息と胸がいっぺんに苦しくなり、喉まで痛くなった。

芳明と離れたらーー私は毎日こんなふうに泣くのだろうか?

そんなことをまた思っては、いつまでも止まらない涙に暮れた。
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