ペーパースカイ【完結】
こうやっているうちに、瞬く間に芳明と離れる日がやって来るのだろう。

寂しさと、彼を避けている自分への自己嫌悪で毎日辛かった。

メールも電話も、来る。でも、返せない。出れない。

いっそのこと、今のうちから連絡を絶ってしまえば…

もしかしたら、お別れの日が来ても、あまり苦しまずに済むのかも知れない。

そんなことを思ったりもした。

『行かないで』

絶対に言えるわけがないたった一つのその言葉だけが、口癖のように

心に浮かんでは消える。

そんなある日の午後。

耐え切れなくて一斉に墜落した矢のように、激しい雨が突然降りだした。

「あーやばい。傘持ってないや」

「久しぶりだな、すげー雨」

ざわつく教室の中、窓の方に目を向けると、二列向こう、斜め左にいる芳明が

こちらを見て、口パクで『か・さ』と言った。

私が慌てて首を振ると、今度は机の横に引っかけてあるバッグから折り畳み傘を見せて

『下』と、指先を床に向けた。

下駄箱で、待ち合わせようという意味だ。

私が迷っていると、芳明は胸の辺りで『ごめん』というように右手を立てた。

それが『お願い』という意味だと気づいた時、私はこくりと頷いた。
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