ペーパースカイ【完結】
結局、私の体調がしっかり戻ったのは、芳明が引っ越していってしまう当日だった。

そのことに気づいたのは、芳明からのメールでだ。

普段は割と丈夫で、めったに風邪など引かない自分が、よりにもよってこんな時に

何日も寝込んでしまったことを、今さらながら悔やんだけれど

これこそが自分と芳明の運命なのかという気もした。

熱で朦朧としながら毎日たくさんの夢を見た。

そのほとんどの夢に芳明が出てきたが、夢の中の芳明はいつでも私の彼氏ではなかった。

勝手にすねて、勝手に無視して、勝手に寝込んで、夢を見て。

起きたらいつも勝手に涙があふれる、そんな自分にうんざりだった。

恋なんて。

恋なんて、しなければ良かったのかな。

告白なんてしなければ、こんなにも悲しい思いをしなくても済んだのかな。

不毛な自問自答は、このままでは永遠に続きそうだった。

もさもさとパンを齧りながら、どうにかしたい。しなければ。そう思った時、

「会いにいきなよ」

と、ママが突然言ったので驚いた。

この人は、芳明が今日引っ越すことも知っていたのか。

ほとんど呆れてしまい、返事もできない私にママはさらに

「きっともう知ってるだろうけど、一応ママもどの新幹線か聞いておいた」

「逃げちゃダメだよ」と、付け加えた。
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