ペーパースカイ【完結】
荷物はもう、旅行バッグだけ。

ダンボールに詰めたものは全て母親の実家に送られている。

将太のリュックは小学校の頃キャンプに行く時に買った俺のお下がりだ。

小柄でやせっぽちの将太の背には不釣合いな大きさだ。思わず声をかけたら

「別に重くないよ」

と、笑ってみせた。なんだか胸が痛んだ。

手には、昨日クラスメートからもらったという寄せ書きの色紙を持っている。

「新幹線の中で読むんだ」

少し先を歩いていた昭彦が、ちらりと将太を見てニヤリと笑い

「それ見て泣くなよ、お前」

と、言った。

「泣かねーよっ!」

「ほんとかよ~?」

そんなことを言って弟をからかっている昭彦こそが

自分がもらってきた色紙を読みながら

昨夜こっそり泣いていたのを俺は知っている。

絶対に知られたくはなかっただろうから、たまたまとはいえ気づいてしまったことを

密かに申し訳なく思った。



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