ペーパースカイ【完結】
憧子はなんだか恥ずかしがっていたようだけれど

俺は憧子のお母さんが、なんとなく可愛らしくて好きだった。

あまりにも憧子に顔が似てて、驚くほど憧子と性格が似てなさそうな人。

一番好感を持ったところは、憧子のことを本当に大事に思ってるのが

言葉の端々に滲み出ていたところだ。

成り行きでつい晩飯をごちそうになった、あの家の雰囲気も好きだった。

少し複雑な事情があるらしいが、家族が全員明るくて、仲が良くて、幸せそうで。

俺の家にはなかった、とても幸福な匂いが漂っていた。羨ましいくらいに。

売店の手前で、ポケットから財布を出すために俯いていたら、

ふと目の前に白い足が見えた。

スニーカーに見覚えが、ある。

俺は目を上げ、そこに信じられない光景を見た。

いつも見ていた、毎日見ていた。制服姿で佇む、憧子。

しばらく見つめあった後、泣き笑いのような顔をして彼女は

「来ちゃった」

と、短く言った。



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