ペーパースカイ【完結】
「そうなんだ」

俺は一瞬混乱して、なんだか間の抜けた返事をしてしまった。

「うん」

「そっか」

「…うん」

違うだろ!と頭の中のもう一人の自分が叫んだ。

ハァハァと、息を弾ませている憧子。風邪を引いていたせいか、少しやせた気がする。

「…風邪、治った?」

「うん」

だからそうじゃないだろ!と、また脳内の自分に言われた。わかってる。

わかってるよ。

そんな世間話をしている暇は、もうわずかしかないんだ。

「ちょっと、待ってて」

とりあえず、家族と自分の分の弁当と飲み物を急いで買った。

情けないことに、財布を持つ手が小刻みに震えている。

何を、どこから話せばいいんだろう。

そもそも憧子に話したかったことは、まだうまく整理がついていないままだ。

おつりの小銭を落としてしまった。それを拾い上げて俺に渡すと憧子は

「言いたいこと、言いに来たよ」

と、まだ泣き笑いのままの顔で言った。



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