ペーパースカイ【完結】
「行っておいで。ママ、ここで待ってる」

タクシーを降りると、そう言ってママが手を振った。

私は頷き、もう迷わずに、一気に走り出した。

とにかく早く、一分でも早く行かなくては。時間がない。

先に乗っている人をどんどん追い抜いて、エスカレーターを駆け上がり

ホームに立った。芳明が乗る新幹線がもう停まっている。

彼はどこに乗っているんだろう。車両を確かめようと携帯を開きかけた時、

見つけた。

すぐに、わかった。

少し先の売店、そのまた少し先を、俯いてこちらに向かって歩いてくる。

「芳明」

口の中で、つぶやいた。

芳明だ。

会ったらどんな顔をしようなんて考えてたことも、なんと言えばいいだろうなんて

迷ってたことも、全てが一気に吹っ飛んでしまった。

ただただ、会えて嬉しかった。

どうしようもなく芳明が好きだと思った。

ゆっくりと、彼に近づく。少しずつ縮まる距離がもどかしい。少し足を速めた。そして

やっと私に気づいた彼に

「来ちゃった」

と、ただそれだけを告げた。

万感の、想いで。
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