ペーパースカイ【完結】
「久しぶりだね」

芳明はずっと『信じられない』というような顔をして

私の言葉に短い返事をするばかりだった。

どうしよう。もっと他に話すことがあるのに、絶対にあるはずなのに、

なかなか思いつかない。

風を大きく切り裂くようにして、反対側のホームを勢いよく新幹線が走り抜ける。

あとどのくらい、時間の猶予はあるだろう?

慌てて時計を確かめようとした時と、その音はほぼ同時だった。

窓を叩く音。振り向く芳明。あれは…芳明の、弟?

瞬時に私は理解した。もう時間がないのだ。どうすればいい?

乞うように芳明を見上げると、突然腕を摑まれ、抱きすくめられた。

芳明の肩越しに、目を丸くした弟の顔が見えた。




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