ペーパースカイ【完結】
私をこんなにも切なくさせておいて。

こんなにも好きにさせておいて。

もう、すぐに目の前からいなくなってしまうくせに、こんなにも強く抱きしめるなんて。

「…最低」

ぼそりと私が呟くと、芳明は

「だよな」

と言った。

その背に私は両腕を回した。

「…いなくなっちゃうくせに」

「うん」

「ムカつく。」

「…うん」

ギュッと力を込めて、いとしいいとしい、ムカつく身体を抱きしめる。

一ミリも距離がないうちに、一番言いたかったことを言おう。

今、やっとわかったから。何を伝えたかったのか。

自分がなんのために、ここまでやって来たのか。

「好き」

芳明が、返事の代わりのように、私の首筋に唇を押しつけた。

「大好きだよ、芳明」

「俺も」

唇が動くと、ちょっとくすぐったかった。でも、

こんなにも、好きな人に好かれているんだもの。もう、それだけでいい。

「ずっと好きだから。だから、時々一緒にいような」

これから何度も再生しよう。芳明のこの声を、言葉を。

何度も何度も。何万回も。

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