ペーパースカイ【完結】
「あー、いまのナシナシ。振り向かないで、いーよ」
「……はあ?」
「いいなぁ、ショートカット似合って。あたし全然似合わないもん。
なんかね、おサルみたくなっちゃうんだ。だからすっごい憧れてんだけど、
もうしないんだ。似合わなくって、はずかしーもん」
「……はあ」
振り向いた私の肩を
「ナシナシ」と慌てて掴んで、また元の方に向き直させた苺は
「うんうん。やっぱショートは後ろ姿がね」
ひとり、満足げにつぶやいた。
「後ろ姿が…なに?」
なんだか変な子…と思いながらも、私は尋ねた。
「首のとこの感じが、ね、特に好きなの。ねえ名前なんて言うの?
あたしはねえ、相川苺」
「あ、えっと綿引輪子」
「…わこ?」
「うん。輪っかの輪に、子供の子」
「ふーんふーん…名前もかわいいんだね!輪子ちゃんかあー」
「…………」