ペーパースカイ【完結】
〈5〉輪子:シュガーレス・キス・イン・ザ・カー
「どっか行きたいとこある?」
信号待ちの車の中。
陽司は横顔で、努めて明るく私に尋ねた。
「カラオケ?ビリヤード?あ、それともDVDレンタルして、俺んちで観ようか」
せわしなく動くワイパーにさらさら、波のように流される雨の動きを見つめながら
「別に、どこでもいいよ」
私は助手席で、ぽつりと答えた。
何か言いたげに陽司が私の顔を見た、瞬間。
「あ、青だよ」
ぼんやりとにじんだ青の信号機にすら、邪魔をされているみたい。
今日は水曜日。
学校帰りの道の途中で、陽司が私を待っていた。
「日曜日、会えなかったからさ」
半月以上も会っていなかった、会いたかった人が待っていてくれたのに。
私は素直に喜べなかった。
すぐに笑顔には、なれなかった。
「ごめんね輪子。……やっぱり、怒ってる?」
車を走らせながら、素直で優しい彼は言う。
「…怒ってるってわけじゃないけど……なんか勝手なんだもん、陽司。
会う約束してる日はドタキャンするくせに、約束してない日に急に会いに来
るなんて」
「……………」
信号待ちの車の中。
陽司は横顔で、努めて明るく私に尋ねた。
「カラオケ?ビリヤード?あ、それともDVDレンタルして、俺んちで観ようか」
せわしなく動くワイパーにさらさら、波のように流される雨の動きを見つめながら
「別に、どこでもいいよ」
私は助手席で、ぽつりと答えた。
何か言いたげに陽司が私の顔を見た、瞬間。
「あ、青だよ」
ぼんやりとにじんだ青の信号機にすら、邪魔をされているみたい。
今日は水曜日。
学校帰りの道の途中で、陽司が私を待っていた。
「日曜日、会えなかったからさ」
半月以上も会っていなかった、会いたかった人が待っていてくれたのに。
私は素直に喜べなかった。
すぐに笑顔には、なれなかった。
「ごめんね輪子。……やっぱり、怒ってる?」
車を走らせながら、素直で優しい彼は言う。
「…怒ってるってわけじゃないけど……なんか勝手なんだもん、陽司。
会う約束してる日はドタキャンするくせに、約束してない日に急に会いに来
るなんて」
「……………」