ペーパースカイ【完結】
今まで何度も何度も何度も泣いてきたこと、全然ムダじゃなかったね。

何を言っても、何を言われても、何をしてても、幸せ過ぎてたまらない時期。

こんな頃が、あったなぁ。

陽司と私の間にも。

なんだか目の前の二人が、四年前の自分達と重なって、痛いくらいにまぶしい。

「あ、いけない。私、そろそろ出ないと」

「そっか!この後も用事あるって言ってたもんね。陽司君と会うの?」

「ううん。渋谷で、…有希と、待ち合わせしてんの」

「有希ちゃん…?って…あの有希ちゃん?」

「うん、そう。あ、山中君これ、コーヒー代。ごめんなさい、なんかバタバタしちゃって」

「あ、いっすよオゴリで」

私と山中君のやりとりを、苺はじっと黙って聞いていた。

なんだか全部を見透かされたような気がして、きちんと目を合わせられなかった。

短いスカート。

胸元が大きく開いた服。

高いヒールの靴。

メイクも香水も。

苺に見つめられると、さっき陽司に入れたメール内容よりも、

その後すぐに電源を切ったことよりも、よっぽど深い罪悪感が胸を突き刺した。

そして私は逃げ出すみたいに、二人と別れ、駅へと向かった。

まるで

「これからご出勤」

の、「夜の女」みたいに。
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