ペーパースカイ【完結】
〈10〉苺:ショート・ラブストーリー
いつもの待ち合わせ場所。

駅前の噴水。

今日は放課後じゃなくて、初めて朝から二人でここにいる。

山中君は、すごく無口で。

話しかけてもいい?って聞きたくなるくらい、他人みたいで。

すぐ隣りにいるのに、ものすごく遠い。

あたしの心、羽もはえない。

代わりにスカートの中、暴れてるのは小さな怪獣。

炎を吹きながら、鳴いている。

「相川さん」

「はい」

「…なんか飲む?」

「…ううん、いい」

「…相川さん」

「うん」

炎を吹きながら、泣いている。

「……ごめん」

「…………」

みぞおちに、大きな穴があいた。

あたしこれ、なんだか知ってる。

何度も何度も繰り返したから、イヤってほど、知ってる。

「あの子が…前に言ってた元カノ?」

「うん…そう」

山中君は、うつむきながら、ぽつぽつと話し始めた。

元カノは、一年生の時のクラスメートだった事。

親友みたいに仲がよくて、いつも一緒に遊んでた事。
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