ペーパースカイ【完結】
でもそれあたし、わかるよ。

恋をすると誰だって、勝手になるもん。

みっともなくても恥ずかしくても、そんなのはもうどうでもよくって。

そばにいてほしいって、離れていかないでって思うし、言いたくなっちゃうもんね。

スカートの中の怪獣みたく、手に負えない感情。

それが「好き」って事なんだもん。

「あの子、ちょっとだけあたしに似てたね。…あたしは、あの子の代わりだったの?」

「代わりなんかじゃないよ」

ずっとうつむいてた彼が、私の目を見る。

あぁ。やっぱりあたし、この男の子の事、大好き。

初めて会った時のあたしの勘は、的中したね。

『すごく真面目そう。好きになった女の子の事、すごくすごく大切にしそう』

みぞおちにあいた大きな穴。

それは、失恋間近の、ブラックホール。

「山中君、いいものあげる」

あたしは突然ひらめいて、カバンの中を手探った。

「手ー出して」

不思議そうな顔をして、黙って右手を出した山中君。

その手のひらに、あたしは今朝ママにもらったあの箱をポン!と乗せた。
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