ペーパースカイ【完結】
朝陽が差し込む、窓際の席。

陽司のパフェ、ストロベリーとバニラのアイスクリームが、

少しずつ溶けはじめている。

こんなふうにずっとずっと、溶け合えていられればよかったね。

「…そいつともう、つきあってるとか?」

溶け合っていられれば、よかったのにね。

「…土曜日、ほんとはその人と一緒にいたの。…もう、エッチもしちゃったよ」

「嘘だろ?」

「ううん。…ほんとだよ」

カチャン!

アイスクリームをすくわないまま、ガラスの器にスプーンを投げ入れた陽司。

煙草に、火をつけた。

馴染んだ匂いのいつもの煙草。

二本、続けて吸った後、陽司は伝票を持ち、立ち上がった。

「輪子」

「…なに?」

見上げた陽司の顔は、無感情で冷たく見えた。

「…ほんとでも嘘でもいいけど。…変な男にだけは、捕まんなよ」

「……………うん」

けれどもやっぱり声も言葉も、いつも通りに優しかった。

「…じゃあ」

「…うん」

「……元気で」

陽司が店を出て行った後も、私はしばらく立ち上がれなかった。

ピンクと白のマーブル模様に、すっかり溶けたアイスクリームを、

ただじっと見つめたまま、私はずっと動けなかった。
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