ペーパースカイ【完結】
そんな理由で別れたなんて、苺に怒られちゃうかな。

「知んなかったよそんなの…

あたし、片思いじゃなかったんだ。輪子と両思いだったんだ!!」

「あはは!そうだよ!!」

ベコ!っと缶をつぶす音がした。

「苺、飲み過ぎじゃない?」

「ふふ~。そうかも!ちょっと、オシッコしてくるぅ~」

くじらの梯子をおりて、苺はトイレに走っていった。

私はまた、一人で空を見上げた。

完璧ではないけれど、満月にかなり近いかたちの月。

それはまるで「恋」みたいに見えた。

私みたいだし、苺みたいにも見えた。

それから、なんだか…なんだか……

「よいしょ、よいしょ」

再び梯子を上ってきた苺が、私の背中にもたれて言った。

「輪子ちん。あたしね、中二の時に妊娠して、赤ちゃん堕ろしたことあるんだ」

「え?」

「今まで、誰にも言えなかったんだ」

「……………」

「一人の男の子ときちんとつきあってる輪子に、そんな事知られたら

嫌われちゃうかもって思って。だから今まで言えなかったんだ。

でも本当は誰かに、聞いてもらいたかったんだ」

「……………」
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