ペーパースカイ【完結】
輪子ママは、まだ47歳だった。

輪子ママは、多少貧血気味なくらいで、持病も特に持っていなかった。

それなのに、突然死んでしまった。

きっと、あっ、と言う間も思う間もなく、死んでしまったんだろう。

死因は脳挫傷。

住み慣れた家の階段を踏み外し、かなり高い位置から

ダダダダダン!!

と落っこちた。

貧血で、めまいを起こしたせいではないか、とお医者さんは言ったらしい。

輪子はその時、あまりにもド派手なその音に驚いて、慌てて部屋を出た。

割れたお皿と散乱したクッキー、スリッパと共に輪子ママは

一階の廊下に倒れていたらしい。


「輪子」

輪子パパに、小さな声で促され、輪子は焼香するために前に出た。

するん、とあたしの手から離れて。何も言わずに。

何を言ってるんだか全然わかんない、読経。

何が起こってしまっているのかすらも、全然わかんない。

ヘタなドラマの、よくあるワンシーンみたい。

このたくさんの黒い服の人々は、ひょっとしたら

「エキストラ」

っていう奴なんじゃあないの?

ねえ?輪子ママ。

飾られた遺影に心の中で語りかけながら、あたしも焼香を済ませ、

輪子の隣りに戻り、再び手をつないだ。
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