ペーパースカイ【完結】
「苺」

輪子がつぶやく。

「…今日って、何曜日だっけ…?」

ねじれた空間の中に閉じ込められた、輪子。

「…わかんない…」

少し考えてから、同じ空間の中でつぶやいた、あたし。

「人って…人ってさ、本当に死んじゃうんだね。知らなかったよ」

あたしも。

あたしも、知らなかった。

知ってたようで、まったく全然、知らなかったよそんなこと。

もう二度と、海苔でぐるぐる巻きのでっかいおにぎり、食べれないんだね。

あたし達。

焼き場で最後のお別れの時、白い花を次々手向ける人々の中で、

輪子は真っ赤なカーネーションの大きな花束をほどき、輪子ママの体の周りに

びっしりと詰めた。

「もうすぐ、母の日だったから」

小さな声でそう言いながら、用意していたプレゼントを、最後に輪子ママの顔の近くに

そっと置いた。
< 67 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop