ペーパースカイ【完結】
今度は、あたしが驚く番だった。

知ってる知らないのレベルじゃない、その名前。

「今、その輪子んちに向かってるとこなんです」

そんで急ぎ過ぎて、コケたんです。

そう言ったら一哉君は

「ほんとに!?俺も、輪子さんに会いたいんだ。ついてってもいい!?」

突然、すがりついて来るような勢いで、言ってきた。

ナンパじゃなくってこれは?

もしや、輪子のストーカーか???

あたしが躊躇してるのを見て、一哉君は輪子と一緒に飲み屋で撮った写メを

見せてくれたりしながら、慌てて

「怪しい者ではないです」

と、必死でアピって来た。

そしてあたしのリュックを持ってくれて、

輪子の家まで歩いてる間も、自分は輪子とどういう知り合いか、

どういう関係か、どうして輪子の家に行きたいか、色々と話してくれた。

それらは要約すれば全て、なんて事はない。

「輪子の事が好き」

っていう意味だった。

本人は精一杯それを隠そうとしながら話していたけど。

女の勘を、ナメたらいけない。
< 80 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop