ペーパースカイ【完結】
〈g〉苺:ナンバーワン・アンド・ナンバーワン
「あたしって、ほんっと!!ボキャブラリー少ないからさぁ」

Tデパートの屋上。

唯一の喫煙場所があるベンチに座って煙草を吸っている幸太を見つけた。

休憩時間がかぶるのって、何だか久しぶり。

それでなくても最近は、幸太とゆっくりデートもしてない。

部屋には何度か泊まったけど、それだって夜中、ただ寝に行くだけだった。

あたしは輪子と輪子パパが心配で、

前よりいっそう輪子の家に遊びに行く事が増えたから。

「泣いてる輪子に『大丈夫だよ、大丈夫だよ』って、

それっくらいの事しか言えなかったんだ…そんでね」

ジュッ。

幸太が、灰皿に煙草を投げ入れた。

ん?

なんだろう?今の感じ。

一瞬、ピリッて電気が走ったような気がした。

「…?幸太?どうかしたの??」

「いや…?別になんでもねーよ」

「……もしかして、機嫌悪い?」

「んあーー…」

ベンチの背にもたれ、のけぞりながら幸太は言った。

「最悪。

…さっきさ、俺がついてた客、小川に持ってかれた。普通ありえなくね?

俺がその客についてんの、レジでずっとただつっ立って見てたのによ。

すげー腹立ったわ。つか、やる気なくした。マジうぜぇ、あいつ」
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